国際輸送で使用されるパレットの種類4つ|注意点・輸送時のポイント

国際輸送や貿易実務に携わっている人にとって、使用されているパレットの種類や処理について正しい知識を持つことが重要になってきます。輸送する商品を安全に運ぶためにも、最適なパレットを選択することが必要です。パレットの特徴を理解することで物流コストの削減や運送効率を高めることにも繋がります。

国際輸送におけるパレットの種類や、メリット・デメリットについて解説します。

また、国際輸送における燻蒸処理も含めポイントについて詳しく見ていきましょう。

国際輸送における「パレット」とは?

国際輸送において重要な役割を果たす「パレット」は、荷物を効率的に運搬するためにも欠かせません。パレット輸送はフォークリフトやハンドリフトの爪を差し込み、重量のある荷物も簡単に持ち上げ降ろせる構造です。複数の荷物をまとめて移動できることもあり、手作業と比較しても時間を効率的に使い、限られた労力を削減できる特徴も持っています。国際輸送でも規格化された素材やサイズがあり、国を跨ぎ運ぶ物流でも活躍してくれます。
(内部リンク:パレット輸送とは?4つのメリット・パレットの種類・5つの課題点も

パレットの使用メリット

パレットを使用することでどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。

●作業効率の向上につながる

バラの荷物のように、人手が必要になる積み下ろしも少なくありません。パレットを活用すれば、フォークリフトでまとめて荷物が運搬できるようになります。積み下ろし作業を迅速に進めることもできますし、人件費の節約や荷物に与える影響も少なくなります。また、パレット単位で荷物を保管でき、荷物を整頓した状態で輸送されるため、品質管理を容易にして作業を効率化することにも繋がります。

また、パレットを使って運搬することによってトラックドライバーの作業負担を軽減することにも繋がります。荷役作業を効率化させ、ドライバーの労働時間を短縮できる可能性も出てきます。労働環境を改善させたいと考えている人にも向いています。

●輸送効率の向上につながる

パレットは、JIS規格に基づき四角形の形状を維持しています。そのため、トラックやコンテナのなかに隙間なく積載させることも可能です。パレットを組み立てた状態のままであれば、荷物を積んでいる状態でも安定性を保つことも可能になります。低い高さのパレットであれば二段積みにして使用できますし、輸送効率をより高めて重量感のある大きな荷物を運搬したいときにも便利です。

●荷物の紛失や積み残しリスクを低減させられる

パレット輸送では、倉庫への入庫作業や積み替えも簡単にできるようになります。そのため、荷物の紛失や積み残しリスクを軽減し、安全に届けることにも繋がります。抜き取りのリスクを軽減することにも繋がるため、国際輸送であっても安心して利用できる手段として知られています。

●荷物の破損リスクを低減させられる

運搬する荷物を一つ一つ手作業で積み込むときは、積み下ろしの回数が増えてしまいます。そのため、荷物の破損や汚損の可能性も高まってしまいます。また、手作業の場合、部分的に力が加わってしまうこともあるため破損してしまうケースも考えられます。

パレットを使った輸送では梱包用のフィルムに包んでひとまとめにしてまとめています。また、フォークリフトを使えば荷物に直接触れることもないため、破損リスクを軽減することにも繋がります。荷物の破損が少なくなることで、顧客の信頼性を高めて返品の可能性を減らせます。

国際輸送で使用されるパレットの種類4つ|メリット・デメリットも

国際輸送で使用されるパレットの種類は、主に木製パレットとプラスチックパレット、金属パレット、段ボールパレットの4つがあります。

それぞれどのようなパレットなのかメリット・デメリットも説明します。

(1)木製パレット

国際輸送で使用される木製パレットは、名前でもわかるように木材を使用して作られたパレットのことをいいます。床面積が広いため積み重ねにも適しており、輸送業界の多くで導入されています。運搬される商品の幅も広いため、目にする機会も多いでしょう。

木製パレットのメリットとして、安いコストで手に入れやすく、十分な強度や耐久性が期待できるパレットとしても知られています。

デメリットとして、木材に含まれている害虫(微生物)を取り除くための処理が必要になります。熱処理パレットは、駆除するために木材を56℃以上で30分間加熱したもので、国際基準のISPM No.15に準拠したものになり、植物検疫基準を満たすことになります。

国際基準を満たすために、適切な処理を行わなくてはいけないため、取り扱いには注意がかかせません。

(2)プラスチックパレット

国際輸送で使用されるプラスチックパレットは、ポリエチレンなどの素材を原料に作られているパレットのことをいいます。木製パレットの次によく使われているものとして知られており、生産量の高さでも知られています。

プラスチックパレットのメリットとして、軽量で扱いやすく耐久性に優れている点です。そのため衛生的に使用できるなど、長期的に使用するパレットとしても向いています。虫の発生やカビが発生することもなく作業効率を高めることにも繋がるので、長期的なコスト削減効果も期待できます。

プラスチックパレットのデメリットは比較的少なく、再利用がしやすく修理(補修)やメンテナンスもできます。唯一、一部の国ではプラスチックパレットの規制があり、輸出入する際には事前に申請が必要になることもあります。そのため、必ずしもプラスチックパレットが使用できるとは限りません。

(3)金属パレット

国際輸送で使用される金属パレットは、アルミニウムやスチールを使用して作られたものです。生産量は木製パレットやプラスチックパレットよりも少なめになり、スチールパレットと呼ばれることもあります。使用している素材からもわかるように、耐久性に優れており重量感のある荷物の輸送にも適しています。そのため、運ぶものを選ばずに使用できる点もメリットと言えるでしょう。

また、金属パレットは防水性にも優れており、日本のように湿気の多い環境での使用も問題ありません。金属パレットのデメリットとして、価格が高いため気軽に購入できない点があげられます。重量感もあるため、国際輸送のコストが高くなってしまうためコスパがいいとはいえません。

金属パレットを使用する場合は、どのような輸送ルートを使うのか荷物の種類なども考慮したうえで決めるのをおすすめします。

(4)段ボールパレット

段ボールパレットは、近年徐々に浸透しているタイプのパレットです。素材に段ボールを使用しているため、リサイクルが容易にできエコフレンドリーにも適した素材としても認知されています。あくまでも小物を運搬するときに適しているパレットになり、強度は限定的です。

段ボールパレットのメリットとして、重量が軽く低コストで導入できることです。ワンウェイパレットとしての使用にも使えるため、一度きりの輸送で回収の手間を削減することも可能です。リサイクルもできるので環境にも優しく、木製パレットのような燻蒸処理を必要としません。

段ボールパレットのデメリットとして、運べる荷物が限られてしまうことや長距離輸送には向きません。湿気や衝撃にも弱いため取り扱いに注意が必要です。大型の荷物を運搬するのには適していないため、他のパレットの使用を検討しなくてはいけなくなります。

【注意】木製パレットの場合は「燻蒸処理」が必要!

木製パレットを国際輸送で使用する場合は、物検疫措置に関する国際基準に基づき燻蒸処理が必要となります。木製パレットの二方差や四方差しパレットはもちろん、合板パレットなども燻蒸処理の対象です。

燻蒸処理=熱処理パレットと呼ばれており、病害虫を除去し輸出制限のある国でも使用できます。

加熱処理を行い「HTスタンプ」を押されたものが国際基準に適していると考えられています。マーク表示は、相対する2か所以上の見やすい場所に押印しなくてはならず、マークがついているものは繰り返し使用可能になります。

燻蒸処理とは、木材パレットのような製品や梱包材のなかに潜んでいる害虫・病原体を駆除することをいいます。すべてのパレットで対象になるわけではなく、輸入する国が生態系の保護を目的に行っている対策としても知られています。木材の内部に侵入している病害虫を死滅させるためにも、高温や高湿度の環境で加熱して処理を行います。燻蒸処理は、行う木材の種類や大きさによっても処理時間が異なるため、国際的に認められた規格にて行うようになります。

ただし、熱処理を行うことで長期使用による木材の劣化には注意しましょう。

ISPM No.15を導入している国は以下の表の通りです。

地域
南アメリカ州アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、チリ、パラグアイなど
北アメリカ州アメリカ、カナダ、グアテマラ、コスタリカ、ドミニカなど
オセアニア州オーストラリア、ニュージーランド
ヨーロッパ州EU27カ国、スイス、ノルウェーなど
アフリカ州ケニア、エジプト、ナイジェリアなど
アジア州韓国、台湾、中国、インド、タイ、シンガポールなど

それぞれの国の基準が異なるため、どのような条件の木製パレットが使用できるか確認しましょう。

出典元:https://www.maff.go.jp/pps/j/konpozai/kuni/country.html

国際輸送時におさえておきたい各国のパレットの標準サイズ

海外では物流の効率化を目的に、国や地域ごとに「パレットの標準サイズ」を定めています。日本・韓国・中国・台湾・アメリカ・ヨーロッパなどの主要地域における、パレットの標準サイズについて説明します。

国(地域)パレットの標準サイズ
日本1100×1100mm
韓国1100×1100mm
中国1200×1000mm1200×800mm
台湾1100×1100mm1200×1000mm
アメリカ1219×1016mm
ヨーロッパ1200×1000mm1200×800mm

国によって各種レンタル会社や政府が定めた基準などもあります。

木製パレットを国際輸送で使用する場合は、それぞれの条件も含め確認しておきましょう。

パレットを用いて国際輸送を行うときのポイント

最後に、パレットを用いて国際輸送を行うときのポイントを紹介します。

●パレット使用によるコスト・容積増加を見越して計画する

国際輸送にパレットを使用することは、パレット自体の購入や保管・運搬などの総合的なコストもかかるようになります。また、パレットを使用しない場合よりも輸送容積が増えるため、運搬費そのものが増加してしまう可能性も少なくありません。パレットだけで考えるのではなく、全体のコストを計算したうえで全体の計画に組み込むことをおすすめします。

●フォークリフトの差し込み向きを考慮して積み付ける

国際輸送では、パレットに対してフォークリフトの差込口も考慮する必要があります。国や地域、倉庫設備によってはフォークリフトの差し込み方向が限定されているケースも少なくありません。パレットの向きを間違えてしまうと、フォークリフトの差し込みが適切にできなくなってしまうため、荷崩れや落下事故の原因になってしまうこともあります。あらかじめ「どの方向からフォークを差し込むか」を確認したうえで向きに合わせた荷物を積み上げることが大切になってきます。

●重心位置マークを確認して安全に運搬する

国際輸送用の梱包には、貨物の重心がどこにあるのかを示す「重心位置マーク」がついているものもあります。この位置を確認することで、フォークリフトの爪をどこに差し込むべきか、吊り上げる際にどこを支えるべきかがわかるようになります。安全に荷物の積み下ろしを行ううえでも重要になってくる部分です。重心マークがついていない場合は、貨物の中心を基準に持ち上げるのをおすすめします。

まとめ

パレットを国際輸送で使用する場合、燻蒸処理やパレットのサイズなど国や地域によって異なる基準を覚えておくことが大切です。そのうえで、どのようなパレットを使うべきなのかを考えコストを意識したパレット選びができるようにしておきましょう。フォークリフトの向きや燻蒸処理など、国際輸送のやり方で迷ったときはROUTE88にご相談ください。

私たちは持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
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