2024年4月に労働時間の上限設定が設けられ「物流の2024年問題」として対応が求められるようになりました。物流業界において輸送能力が低下し、今まで通りのシステム維持に影響が出てくる可能性が出てくるといわれています。物流・運送業界の担当者にとって2024年問題とは何か、パレット輸送を使うことでどのようなメリット・デメリットがあるのか詳しく解説していきます。パレット輸送の課題をどのように解決できるのか、そのためのポイントも説明します。
もくじ
「物流の2024年問題」とは?

物流の2024年問題とは、働き方改革関連法におけるトラックドライバーの労働時間に関する問題のことをいいます。日本は少子高齢化が進み、労働力不足や長時間労働など労働問題に多くの課題を抱えています。この問題を解決するための法案として2018年6月に成立し、進められてきました。働く人の多くがそれぞれの事情を考慮しつつ、柔軟な働き方ができることを目指した施策といえるでしょう。
この法案は2019年に施行され物流業界のみ2024年3月まで5年間の猶予期間が設けられました。今までは労働時間の制限もなかったトラックドライバーでしたが、時間外労働の上限を960時間(年間)と制限したことで、輸送能力の低下によって物流が滞るようになり売上の減少にも繋がるといわれています。
利益が少なくなれば、トラックドライバーの収入の減少にもなりますし、人材確保がより難しくなるとも考えられています。もともと人手不足で残業が多く、長時間労働のトラックドライバーは人材の確保が難しいのも特徴です。そのため、物流の2024年問題によって、大きな影響を及ぼすといわれており、物流の機能低下による社会問題に繋がると言われています。
物流の2024年問題による運送会社と荷主への影響
物流の2024年問題によって、運送会社と荷主にどのような影響を及ぼしたのかそれぞれ説明します。
運送会社への影響として考えられるもの
- 労働時間の調整も含め仕事を減らす必要が出てくる
- 運送料金の値上げを行い、利益を出す必要がある
- トラックドライバーの給与を減らさなくてはいけない
これらの影響が考えられます。
今までの運送業界では、トラックドライバーの長時間労働により一定以上の受注量を保っていた部分もあります。そのため、労働時間が短く制限されることによって、ドライバーの労働時間を見直す必要があり、運送料も少なくなります。仕事量を見直す必要も出てきますし、収益の低下や事業拡大に影響します。
荷主への影響として考えられるもの
- 配送料の値上げによる負担が増える
- 配送日時の変更に柔軟に対応できない
などの影響が出る可能性があります。
運送会社が値上げをすれば、荷主にとっても配送コストの負担を増やさざる得なくなってしまいます。
特に今は物価高による商品やサービスへの影響を考えると、大きな負担になることは言うまでもありません。また、運送会社と荷主への影響が出てしまうこともあり、物流の効率化に向けた新しい仕組み構築の必要性も高まっています。
物流の2024年問題の解決策となる「パレット輸送」とは?

物流の2024年問題への解決策として、最も注目されているのが「パレット輸送」です。パレット輸送はバラ積みの状態ではなく、パレットに積載して出荷作業や荷卸し作業を行うことです。特に企業間での配送の取引の場合、運搬する荷物の量も多くなるためパレットを使って移動したり、納品・保管を行うことで運搬の作業効率化へと繋げることができます。
2023年9月に国交省が発表した物流改革のなかでも、効率化を高めるために即効性のある設備投資を促進することとあり、なかでも重要な項目としてパレットをあげています。他にもフォークリフトを導入することや、機会・自動化、物流標準化の推進としてコンテナの規格統一化などもあります。
パレット輸送とは?4つのメリット・パレットの種類・5つの課題点も
パレット輸送のメリット4選|2024年問題に対する効果

パレット輸送を導入することは、運送会社によって多くの利点をもたらすといわれています。
業務効率化やコスト削減などのメリットはサプライチェーン全体に波及するもので、最終的には荷主や一般消費者にとっても配送料のコスト削減などの大きな利益をもたらすようになります。
パレット輸送における4つのメリットについて詳しく紹介したいと思います。
積み込みや荷下ろしにかかる時間を大幅に短縮できる
パレットを使うメリットとして、荷物をまとめ管理ができるため積み降ろしにかかる時間を大幅に短縮することが可能です。また、パレットの上には余計なものがなく視認性にも優れているため、荷物の積み込みによる見落としなどのミスを防ぐことにも繋がります。
手動で荷物を持ち運ぶことに比べると、心身にかかる負担を軽減することも可能です。荷物を効率的に扱えるようになるため、作業員の負担を減らすことにも繋がります。物流の業務効率を改善できるため、品質の向上にも大きく関わります。
ドライバーの身体的負担を軽減できる
パレット輸送を使うことで、トラックドライバーの身体的な負担を軽減することにも繋がります。運搬するときにパレットの上に荷物を載せてしまえば、あとはそのまま移動できるようになります。荷物を倉庫に出し入れするときや積み降ろしするときにドライバー自ら作業をする必要もありません。
トラックドライバーは長距離を走り荷物の積み降ろしまでの大きな負担がかかってしまうため、体にかかる負担を軽減できるメリットが期待できます。パレットの上に置いたまま安定性を維持できるため、保管の効率化にも繋がりやすくなります。
荷物の破損リスクを低減できる
パレット輸送の場合、ドライバーの手作業よりも積み降ろしの回数が少なくなります。積み降ろしの回数が増えれば、その分荷物の破損や汚損のリスクを高めてしまいます。特に手作業のときは強い力が加わってしまい、意図せず破損させてしまう可能性も出てきます。
パレット輸送は大切な荷物を安全に運ぶのはもちろん、リスクを低減することにも繋がります。ラップで巻く時は荷物に触れますが、荷崩れ防止にも最適です。もし、破損してしまったときどこで破損したのかわからなくなってしまうため、責任の所在も出てきてしまいます。
積載率の向上による輸送コストの削減が期待できる
パレットのサイズによっても変わってきますが、一般的な1,100×1,100サイズにしていると、10トントラックで16台前後のパレットが積載できることになります。パレット輸送が難しいと思われがちなのは、送られてくるパレットのサイズが一律ではないため、ボリューム感を把握しにくいためです。同じサイズのパレットで統一されていれば、十分な予測もでき計画的な配送に繋がります。積載率の向上によって、輸送コストの削減も期待できます。
パレット輸送のデメリット5選|導入による新たな課題

パレット輸送には2024年問題の解決に繋がるさまざまなメリットや効果があります。その一方で、パレット輸送を導入することで新しい課題といえるいくつかのデメリットも出てきます。具体的にどのようなデメリットがあるのか、詳しく説明したいと思います。
フォークリフトの利用が必須となる
パレット輸送には、フォークリフトの使用が前提となります。パレットには差し込み口が2箇所のものや4箇所のものなど種類があります。荷物の納品先にフォークリフトがないときは、利用できず効率的な方法とは言えなくなってしまいます。荷物の量によっては、積み降ろしはパレットよりも段ボールのほうが適している場合もあります。フォークリフトの有無によっては、パレット輸送ができない場合も出てきます。フォークリフトの運用には資格も必要となってしまう点もデメリットと言えるでしょう。
設備導入に大きな初期投資が必要となる
今までフォークリフトを持っていない場合は、購入もしくはレンタルの費用がかかってきます。他にも、フォークリフト以外にパレタイザーやパレットなどの購入が必要になるため、初期費用の負担が大きくなってしまいます。設備のなかには、1台数百万円と高額な費用がかかることもあるため、企業にとっても大きな負担となってしまいます。設備導入のコストをかけても、パレット輸送のほうが効率化できるかも含め確認しておきましょう。
パレットの保管スペースを確保する必要がある
パレット輸送では、パレットの保管スペースの確保も重要になってきます。保管はもちろん適切な管理を行うためのスペースを用意できるかどうかです。大きな規模の工場であればそこまで心配はありませんが、狭い倉庫の場合、パレットを置くために作業エリアが圧迫されてしまい作業効率を下げてしまうことも考えられます。パレットを保管するための十分なスペースを確保できるのか、また限られたスペースを上手に生かすためにも適切なパレットを選ぶようにしていきましょう。
かえって輸送効率が低下する可能性がある
前述でも説明しましたが、パレットに適していない荷物を配送したり、保管するためのスペースを確保することで輸送効率を下げてしまう可能性も出てきます。必ずしもフォークリフトを持っている会社ばかりではないため、使いずらさを感じることも十分に考えられます。また、フォークリフトを持っていて揺れてしまったときに荷崩れを起こすリスクも考えられます。リスクを抑えるためにも保護用のラップを使った包装などの対策が重要です。
パレットの回収・管理にコストや労力がかかる
一般的にパレットは荷物を運搬したあとに回収しなくてはいけません。運送業者に回収してもらう方法もあるため一概には言えませんが、追加料金が大きなコストとしてかかってきます。また、使い捨てのワンウェイパレットを利用する運送会社もあるのですが、環境負荷の増大に繋がってしまう点も大きな課題として覚えておく必要があります。回収のコストを負担できるかどうか、回収を依頼できるサービスもあります。
パレット輸送の課題を解決するためのポイント

最後に、パレット輸送における課題を解決するための4つのポイントを紹介します。
具体的にどのような対策ができるのか、リスクを減らすためにも覚えておきましょう。
フォークリフト・パレットの最適化
パレット輸送に不可欠なフォークリフトには種類があるため、実際に作業を行う環境やスペースに応じて選ぶことが大切です。作業効率を高めるためにも、現場に適した設備選びが欠かせません。リーチフォークリフトなどのコンパクトタイプを選べば狭い倉庫の中でも小回りが利き作業もしやすくなります。
また、フォークリフトでも自動運転やリモート操作システムを導入することで、作業効率の向上や従業員の安全確保にも大きく影響してきます。
倉庫・物流スペースの有効活用
限られた倉庫や物流センターのスペースを最大限活用するためにも、工場内で効率的なレイアウト設計や垂直収納システムを導入するかどうかを検討するのをおすすめします。パレットのサイズは、荷物やスペースに合わせカスタマイズを行い無駄のない積載を実現させるのもポイントになります。また、物流センターや3PL企業と連携させ、ジャストインタイム配送など作業効率の高い運用に活かせるかどうかです。
パレット回収の効率化と紛失防止策への取り組み
パレット輸送は回収の手間や紛失による損失が大きな課題となります。共同回収の仕組みを構築することで回収ルートの短縮や回収頻度の向上が可能です。また、車庫や在庫状況を自動で把握できる管理システムを導入する方法もあります。過剰在庫を防ぐのはもちろん、紛失の発生を未然に防ぎつつ回収作業の効率化にも繋がりやすくなります。
レンタルサービスの活用
パレット輸送に必要な周辺設備の多くは、購入だけに限らずレンタルの選択肢もあります。パレット本体はもちろんですが、運搬するためのフォークリフトやマテハン機器もレンタルできます。購入するよりも初期費用を大きく抑えられるため、初期費用を用意するのが難しい人にとっても安心です。また、パレットの保管スペースの確保や回収作業にかかる労力・コストなども管理負担の軽減に繋がるといわれています。レンタルサービスも積極的に活用していくようにしましょう。
まとめ
物流の2024年問題の解消のためにパレット輸送が大きく役立つことがわかると思います。フォークリフトを導入しないと使えないデメリットがありますが、作業効率を高め荷物の破損を防ぎトラックドライバーの心身の負担を減らすことにも繋がります。物流パレットのコストを抑えつつ導入したい人は、Route88にお気軽にご相談ください。